古本屋の魔女と 孤独の王子様

そして賽は投げられた

そして、1年が経つ。
俺はその間に死に物狂いで働いた。
胸の中で燻っていたやりたいと思っていたけど、出来なかった事を始めた。

まず初めに父の支配から逃れる為に仕事を辞めた。
そして、彼女が住んでいた1DKのアパートに棲みつき、一日中PCを睨み図面を描いた。

過去の全てを経つつもりだったが、やはり日向の面影を探してしまう俺は、せめてもの思いで彼女の形跡が残るアパートに棲む事を選んだ。

1カ月引きこもって設計した図面は、街の小さなコンペで勝ち残った。
それを機に俺は、小さな工務店を立ち上げる。

社員は秘書だった酒井と、運動手の前田さんだけ。
俺が仕事を辞める時、目を輝かせて着いて来た酒井は、とても優秀な男だった。彼が営業に出れば、直ぐに顧客を見つけ仕事を取って来てくれた。

そのお陰で工務店は順調に軌道に乗る。
今では設計士3人、営業2人のちゃんとした会社として成り立っている。

そして俺は1年振りに有休を取って、この小さな島の港に到着した。
足取りは軽い。気持ちは高鳴り今にも駆け出したいくらいの高揚感だ。

海岸沿いをひた歩き、そこに一軒の古びた古本屋がある筈だ。子供の頃の記憶を辿り、ただ足早にその家へと向かう。

日向は何と言うだろうか…
帰れと言って追い返されたって構わない。ただ、君に一目会えたなら…愛していると伝えたい。
その思いだけを胸に。

青い空に白い雲、どこまでも続く水平線に輝く水面が揺れている。
今日も彼女は黒いマントを羽織って、黒縁の伊達メガネをかけて、誰も寄せ付けない風貌であの古本屋に立っているのだろうか…。

胸が高鳴るのをもう誰も止められない。
「日向…!!」
君が俺を殺しに来るその前に、俺が君を捕まえてみせる。
                    fin.
< 35 / 35 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:17

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

総文字数/189,847

恋愛(純愛)166ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
2人の出会いは8年前… 千紗が16歳の時、段々と視力を失っていく病気を抱えて生きる気力を失いかけていた時。 たまたま通りかかった青年に救われる。 彼は医学生で、親の跡を継ぐ為になんとなく医師を目指していた。 運命的な出会いを経て8年後… 再び運命は動き出す。 松原 千紗 (まつばら ちさ)24歳 視覚障害者でありながら、病院の受付オペレーターとして働いている。 藤堂 涼(とうどう りょう)30歳 渡米して8年眼科医としての腕を磨き、今年帰国したばかり。 彼が日本に戻って来た目的は、千紗の視力を再び取り戻す事だった。 2人の両片想いの純愛の行く末は…
男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

総文字数/167,366

ファンタジー282ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
カターナ国のボルジーニと言う街を 統治していた父ボルテ公爵が無実の罪で捕らえられ三年。 辺境地に流れ住む没落令嬢のサラ・サマンドラ(18歳)は青い竜ブルーノと共に隣国リアーナの竜騎士団に父を助け出す協力を求めに旅立つ。 誰もが目を引く美男子ながら冷酷で周囲からも恐れられている存在。 隣国リアーナ国の国王陛下が絶対の信頼をおく、 竜騎士団 団長 カイル・マルクス(28歳) 果たして二人はサラの父を助け出し、無実を勝ち取る事が出来るのか。 2人の身分差を超えた恋心は…
求婚は突然に…                孤独なピアニストの執着愛

総文字数/119,792

恋愛(純愛)113ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
深夜のコンビニに来る客は皆、秘密を抱えている。 私、葉月心奈(はずきここな)25歳 社会人になって5年目、新卒で商社に入社して順風満帆な人生を歩んでいる。 はずだった… なのに今、深夜のコンビニで働く私は、世の中の敗者になったのか…。 社会不適合者…そんなレッテルを貼られたような気持ちが沈む毎日。 今夜も最終電車が終わり、街の灯りが消えて行く頃、私は1人コンビニのバイトに入る。 筧 紫音(かけい しおん) 28歳 ピアニスト 兼 作曲家 ヨーロッパのウィーンから帰国したばかり 2人の運命の行方は…⁉︎ ♪レビューありがとうございます♪ 鮭ムニエル様 ★5 いつもレビュー励みになります。ありがとうございます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop