【完結】婚約破棄された男装令嬢ヴァレンティーナは明日を強く生きる!そして愛を知る

二刀流令嬢・朝稽古を終える

「はははは!」

 汗だくで道場で両手両足を伸ばし、大笑いする二人。
 外は大雨なのに、あぁこれが自由なのだ! あぁこれが幸せなのだ!! とヴァレンティーナの心は輝きに満ち溢れた。

 こんな楽しい事は初めての経験だ!
 そう思ったが、ラファエルのオレンジの香りを嗅いだ時に……何か記憶の底で……。
 
 これは……二度目……?

 ヴァレンティーナは寝転んだまま、目を閉じる。

「ラファエル様~! ヴァレン様! やっぱり稽古をしてらしたんですね~!!」

 ハッ! と記憶探しが中断された。
 メイドの二ナだ。
 
「もうお昼前ですよ~ブランチにしましょうー! アリス様もお探しでしたよ!」

「あぁすまない。わかった。みんなで先に食べててくれ!」

 ラファエルが起き上がって、汗だくの髪をかきあげる。
 熱いからだろう、シャツの胸元をあげて逞しい胸元が見えた。

 ドキリとしてしまう。

「なぁ、ヴァレン。……あのさ、アリスは、君の恋人なのか……?」

 そんな時に唐突に出されるアリスの話題。
 何故?

「……君は、ローズ様という奥方がいるんだろう?」

 昨日、姿を見せなかったローズというガウンの持ち主。
 突然の女性話に、珍しくヴァレンティーナはムッとなってしまう。

「え!? 奥方!? ローズは妹だよ」

「妹? ……じゃあ君は独身か」

「あったりまえだろ! って言うのも情けないが……」

 何故かホッとしている自分に気付く。
 しかしこの男は、アリスとの事を聞いているのだ。

「今夜には帰ると思う。あいつも剣をやるんだ。会わせたい」

「そうなのか……。アリスも私の妹のような存在だ。恋人ではない」

「そうか……そうか。色々と誤解をしていたようで、悪かった」

「別に、謝る事はないさ」

「そうか、よかった。なぁ、旅の目的はなんだ? 詳しく聞くのも……と思ったが急ぎの旅なのか? どこへ向かってるんだ?」

 自分の事情を話しても、この男は軽蔑しない……そう思う。
 でもそれは自分の願望のような気もする。
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