好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜



「えー。本当ですか? だっておかしい! 千歳さんも、莉乃先輩の方見てるもん!」
 
 ずいっと顔を近づけて聞かれ、勢いに負けて思わず口が滑ってしまう。
 
「昨日飲みに行っただけで……」
「はあ⁉ 飲みに行ったんですか⁉ なにそれ! 聞いてないですよ!」

 突然怒ったように大きな声をあげたので、驚いて身体がびくりとする。

 おまけに、まるで大罪をしたかのような非難するような目つきで睨んできた。

「ちょ、落ち着いて?」
「落ち着けるわけないですよ! 莉乃先輩が誘ったんですか⁉ 私が誘っても断られたのに!」
「い、いや。本当に飲みに行っただけだから」

 怒りが収まりそうにない佐伯さんをなだめるために嘘をついた。

 目の前で怒りに満ちている佐伯さんに「キスをしました」なんて言える勇気はない。


「信じられない! 莉乃先輩、最低ですよ!」

 佐伯さんはヒステリック近い声をあげた。
 さすがに焦った私は、佐伯さんをなだめようと必死だった。しかし、彼女の興奮は止まることをしらない。


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