不良が弟子になりまして。
師匠

1stday夜

side 成瀬

「はぁ、お前、なんつーことしちゃってんのさ」

「は?」


「あの水瀬ちゃん連れ出すとか、ヤバすぎ〜」

「........」

「お前、全世界の男子を敵に回すぜ??」


俺の家に居座って、俺のゲームしながらも、俺の悪口を言ってくる“ヤツ”の名前は、氷口美琴(ひぐちみこと)

髪の先っぽの方を金髪に染めて、いかにもうるさそうな目のコイツは、なにかと絡んできては、俺に憎たらしい口ばっかりきいてくる。


さらに皮肉なことに、俺の腐れ縁で、幼稚園からずぅーっと一緒だ。




「........相手はオッケーしてくれたんだから、文句ないだろ?」

そう言うけど、美琴はいやいやと首を振って、
「水瀬ちゃんがモテてること知らないのかぁ?」と言ってくる。

「水瀬ちゃん、賢くてかわいい理想の女の子って言われてるぜ??」


(それくらい、俺でも知ってるって.........)


クラスの奴らが毎日毎日ご執心しているとこ、俺もみてるし。

同じクラスで隣の席だったら、すぐにわかる。
 
隣に熱い視線が送られていることが。



「そんな水瀬ちゃんを口説いたって、男の中で噂だぜ〜?」



「どーでもいいよ、そんなん」

(俺、口説いてねーしな)

「で?結局、真相はどうなんだよ?」



興味津々の目で俺を見つめてくるから、ゲーム内の美琴のキャラ、ぶっ潰してやった。



「くそっ!不意打ちはずるくね⁉︎」


「よそ見してたそっちが悪い」



ニヤッと笑ってやったら、ぐぬぬ、と歯を食いしばるこいつ。優越感に浸りながら、俺は言った。




「勉強を教えてもらうことになっただけ」
 

すると、コイツはまたもや何かを探るような目で俺を見てくる。
「ほ〜ん?本当に何もないんだな?」

「ねぇーよ」



水瀬理真と俺は、勉強を教えてくれる人と、教わる人って関係だけ。







————それ以上に発展することなんてない。
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