スパダリドクターの甘やかし宣言

甘やかし宣言

 そして一週間後。
 旅行支度をした私は、新宿駅近くのカフェで恭介を待っていた。
 待ち合わせは十三時、今はそれを十五分ほど過ぎたところ。
 マグカップの中のソイラテは、一番大きいサイズを頼んだこともあって、まだなみなみ入っている。

(外来を終えてから来るって言ってたから、来るのは十四時くらいかなぁ……)

 外来診療は十一時までだけれど、時間内に終わることはまずない。気長に待っていようと、この前買った薬理の参考書を取り出そうとしたら、ガタッと椅子を引く音がして、弾かれたように顔を上げると、目の前に恭介が座っていた。

「悪い、遅れた」

 そう言う彼の顔には疲労が滲んでいる。なにせ彼は当直明けなのだから。恭介は実質二連休なんて言っていたけれど、絶対違うと思う。

「ううん、大丈夫。意外と早かったね?」
「外来、速攻で終わらせたから。それに後のことは森山に押し付けてきた」

 森山先生は配属されたばかりの若手ドクターだ。ちょっと頼りない感じはあるけれど、優しげなので患者さん人気も高い。
 
「森山先生、かわいそうじゃない?」

 苦笑しつつ私がツッコむと、恭介は肩をすくめた。
 
「いいんだよ、別に。いつも世話してるんだから、今日くらいは」

 まあ、確かに。
 森山先生は恭介を慕っているらしく、いつもひっついている印象がある。そう思うと、たまには恭介が頼ってもバチは当たらないのかも?
 とりあえず森山先生には心の中でごめんね、と謝っておくことにする。
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