激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。

愛されたい





時刻は深夜2時前。
明日は本業が休みだという東郷さんの言葉に釣られ、空室のあった近くのホテルに入った。


私も明日は休みだし丁度いい。
考えることなんて、その程度。

ホテルに入ることへの躊躇いなどは一切無い。




「西野さん、抱き締めても良いですか」


大きなダブルベッドの角にぴったりとくっついて座る私たち。

東郷さんのその問いに、私は無言で頷いた。



恋なんて、何度もしてきたのに。

優しく抱擁をしてくれる東郷さんの手つきに、心拍数がどんどんと上がっていくのが分かる。


「…昨日、西野さん。愛されたいと、叫んでいました」
「…え?」
「愛されたいと、何度も」


また、記憶が無い時の恥ずかしい言動が出てきた。
東郷さんの一言に、思わず体が固まる。

私、どれだけ恥ずかしい人なのか。
みるみる体温が上がっていく…。


「私、人として終わっていますね。本当に、すみません」


抱き締めてくれている東郷さんの体を少しだけ押して、抜け出そうと体を捩る。

しかし、その腕は更に力を強めて、私を逃げられないようにした。



「謝る必要はありません。…藤山光莉に愛されなかった西野さん。……大丈夫」



真っ赤になっている私の顔を覗き込み、優しく見つめてくる。
温かく力強いその瞳に、胸の奥がゾクッとした。


「西野さん、大丈夫です。これからは俺が、西野さんが嫌だと感じるくらい、愛しますから…」


率直に、東郷さんは女性慣れをした人なんだろうなと思った。

だけどそれ以上に、言われたことのないその言葉が嬉しくて。
私は東郷さんの体に、力強く…抱きついた。




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