余命2年の王子様

#4『彰との日々①』

あれから、私は、彰と他愛もないメッセージのやりとりしたり、寝る前に電話をしたした。
内容は、【仕事、お疲れ様】【ありがとう】だったり、電話は、主に私の上司の愚痴だったり、彰の
家での過ごし方だったりする。

本当に楽しくて、彰とメッセージや電話できただけで、仕事もいつもより何百倍も頑張れた。
ウキウキしているとあっという間に彰との初デートの日がやってきてしまった。
美容院やネイルサロンに行ってる暇なかったので、どうしようと思って、なんとか慣れないバッチリメイクや
ヘアアイロンを使ったり、ネイルは、百円ショップのネイルでごまかした。
なんか女子力ゼロな自分が悲しくなった。

彰から『今から叔母さんに待ち合わせ場所まで送ってもらうよ。着いたらまた電話する。慌てなくてもいいよ』
とメッセージが来て、私は、慌てて家を飛び出した。
家の鍵閉めたかなんて確認する間もない。それくらい私は、異性との初デートにバクバクしてた。

変な汗かかないように、メイクの上からふける汗拭きシートを常備した。
彰がいるうどん屋さんの前に行くと彰は、すでに待っていた。
私服は、いたってシンプルで動きやすい服装だ。私は、彰にすごく似合ってたので、心臓がうるさいくらい
バクバクした。

『お待たせ。ごめんね。待たせて』
『慌てなくてもよかったのに(笑) 僕は、10分前に着いたところだから。大丈夫だよ。
それより、今日の麻里亜、一段とかわいいね!」

”一段とかわいいね!”

麻里亜は、思わず顔が真っ赤になった。
こんなに適当なメイクとネイル、ワンピースなのに?
かわいいってほめられた麻里亜は、心臓がバクバクと鼓動が早くなった。

『そ、そんなことないよ。彰の私服の方がすごく素敵だよ。』
『ありがとう。僕は、麻里亜の方が素敵だな。』

汗拭きシート、持ってきておいてよかった。

麻里亜は、顔から出た変な汗を軽くふいた。

それからお店に入ると、お客さんは、そんなにいない。まだお昼時ではないからだ。
『すごいおいしそう!麻里亜は、いつも何頼んでるの?』
『私は、素うどんに海老の天ぷらという、海老天うどんだよ。』
『そうなんだ。海老天うどんにしようかな。』
『え?揚げ物食べて平気?』
『うん。麻里亜と一緒なら、食べられそうな気がするんだ。』

私は、思わず嬉しい反面、心配もあった。

私たちは、海老天と素うどんを注文した。彰は、揚げ物を控えてるのか、海老天は、一つだけだった。
私もいつも海老は、2尾頼むが、彰に合わせて1尾にした。
そして、空いてる席に座って、うどんを食べはじめた。

『ここのうどん、すごくおいしい!』
彰は、すごく笑顔でおいしいと言った。私は、思わず嬉しくなった。
一緒に来てよかった。
『よかった。揚げ物、大丈夫?』
『大丈夫だよ。家では、揚げ物一切食べてないから。たまにテレビ見てると、食べたくなるけど
先生から控えるように言われてる以上、仕方ないんだ。』

麻里亜は、彰の切ない表情に胸が苦しくなった。

『麻里亜、僕の前で我慢しなくていいよ。僕は、我慢になれてるんだ。麻里亜が我慢するのは
もっと辛い。』
『そんな。彰の前でトンカツとか食べられないよ!私は、彰となら食べたいものも行きたい場所も全部、我慢するよ。』

彰は、微笑みながら『ありがとう』と言った。
二人は、うどんをゆっくり味わった。
お見せを出た後、志保さんが迎えに来ていた。

『彰君!麻里亜ちゃん!どうだった?初デート?』
『はは。とても楽しかったです。』

麻里亜は、志保の冷やかしにもだいぶ慣れてきた。
彰も苦笑しながら、『楽しかったし、おいしかったよ。』と言った。

『じゃあ、麻里亜ちゃん、自宅まで送ってあげるね。』
『いえ、歩いてすぐなんで大丈夫です。』
『そう?じゃあ、今日は、ありがとうね!また明日から彰は、入院だけど、たまに会いに来てあげてね!』
『はい。』

そうだ。明日から彰は、入院だ。麻里亜は、寂しく思ってると、彰は
『大丈夫だよ。病院に来たら会える。ありがとう。』
と言って、抱きしめてくれた。

ああ、私、彰に依存してるなぁ。彰のぬくもり、彰の匂い、しっかり堪能するかのように
私は、志保さんやほかの人がいるにも関わらず抱きしめ返した。

ーーーーーーーーーー

帰宅後、麻里亜は、彰に【今日は、すごく楽しかった。ありがとう。】とメッセージを送った。
麻里亜は、珍しく久しぶりに自炊をすることに。
メニューは、お浸し、冷ややっこ、お味噌汁、焼き魚といういたってシンプルなもの。
おみそ汁の具は、大好きなお揚げとネギ、豆腐。
お味噌汁を作るとき、みりんを小さじ1杯入れるといいと母から教わって以来、作るときは必ず
みりん小さじ1を入れるようにしている。

母ってありがたいなぁと麻里亜は、一人暮らしをするようになってから痛感し始めてた。

夕飯を食べ終え、食器など洗ってるとメッセージのお知らせの通知が鳴った。
きっと彰だろうと一分一秒、早く見たくて洗い物の途中だが、放り投げて画面を見た。
メッセージは、莉央からだった。
一瞬、ガッカリしかけたが、内容は【明日、早朝会議だって~!朝、7時30分出勤。】だった。

早朝会議、だっる~!

と思ったが、莉央に【ありがとう。早起き、頑張る!】と返信した。
彰は、きっと外出で疲れてるのだ。
返信を早く求めてはいけない。

麻里亜は、お風呂に早めに入って、歯を磨いて、布団に入った。

ーーーーーーーーーー

朝、5時半、麻里亜は、起きて、白米ごはんと昨日、作ったみそ汁を温めて
スーツに着替えて、出勤準備をしていた。
朝起きても彰からの返事は、まだ来てない。
朝5時半だ。まだ寝てるに違いない。

軽くメイクをして、自宅を出た。

『おはようございます。』
まだ3~4人ぐらいしか出勤してない。
莉央もまだ来てない。
これから来るだろう。

『高橋さん、これ、今日の会議の書類。目を通しておいて』
『ありがとうございます。』
私は、男性社員から書類受け取って、目を通した。

それから30分後、莉央も出勤し始め、ほかの社員も続々と来た。

『おはよう!麻里亜』
『おはよう。莉央。これ、書類!』
『お~。ありがとう!』

麻里亜は、莉央分の書類を莉央に渡すと『めんどう~』などと莉央はぶつぶつ文句を言い始めた。
まだ彰から返信来ない。きっと入院準備でバタバタしてるんだろうな。
と麻里亜は、スマホを睨んだ。

『麻里亜。会議の時間だよ。急がないと!』
莉央の呼びかけに現実に引き戻された。
会議室にスマホは、持ち込めない。
彰からの返信が気になるが、今は、会議!仕事に集中しよう。

麻理亜は、鞄にスマホを入れて、書類をもって会議室へと急いだのだった。

ーーーーーーーーーー

会議室では、部長の長ったるい説明に眠気が襲う。
うとうとし始めてる社員だっている。

『では、高橋さん、この問題についてどう思う?』
思わず名前を指されて、びくっとした。
椅子からこけそうになったが、なんとか恥をかかずにすんだ。

『えーっと・・・・私は、もっと取引してもらえる会社を増やしたらいいかと思います。』
『君は、何を言ってるんだ!』

じゃあ、聞くなよ!

と部長に不満と怒りが一気に沸いた。


< 10 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop