王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 強ばっていた肩から力を抜いていると、ジュリアンが果実水のグラスを差し出した。

「どうぞ、喉も渇いたでしょう。このまま夜風で涼みに行きませんか?」
「ありがとうございます……」

 力なく答えて、彼の先導でバルコニーに出る。
 幸い先客はおらず、貸し切り状態だ。先ほどまでの喧噪もカーテンの内側に吸い込まれ、どこか遠くのように聞こえる。
 グラスを傾け、すっきりとした檸檬の酸味で喉を潤す。

「……クレア、どう? 少しは緊張がほぐれた?」

 気さくな口調は下町のときのそれに戻っている。
 だから、クレアも同じように言葉を返した。

「ええ……まあ。おかげさまで」
「それはよかった。宮廷料理人が腕を振るった食事も用意しているけど、じろじろと見られながらだと食べにくいよね? あとで君の客室に軽食を届けさせるね」
「正直、助かるわ。……それにしても、本当に今夜は踊らなくて大丈夫なの? あなたの立場が悪くなるんじゃ」

 懸念を口にすると、彼はふっと笑みをこぼした。

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