降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
近付いてくる整った顔と、なんとか少しでも距離を取りたい私。

さりげなく、ゆっくり後退りをした。


「下がんな」


元々声が低い人なんだろうけど、雰囲気も見た目も威圧感というか、圧倒的オーラみたいなものがあって、別に怒ってるわけじゃないと思うんだけど、怒られてるって錯覚に陥る。


「ごっ、ごめんなさい」

「謝んな」

「すみません」


・・・・言い方悪いかもしれないけど、今までこういう人とは関わらずに生きてきた……というより、極力避けてきた……と言った方が正しいかな。

怖い云々の前に、私は問題事を起こすわけにはいかない。

ひとり暮らしをするにあたって、“鉄則の掟”というものが存在している。


1.問題事を起こさない
2.高校を卒業するまで男女交際禁止


この掟を破ったら“即、海外行き”。

だから私は、中学時代も今現在もなるべく男子を避けてきた。好きになるのも、好きになれるのも困るから。

それでも男子から告白されることが多々あって、気持ちはありがたいんだけど、喋ったことも無ければ接点も関わりも無いのに、なんで私のことを好きになるんだろうって疑問だった。

きっと、私の容姿だけしか見てないんだろうなって思う。

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