降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
折り畳み傘をさして去っていくお隣さんを眺めて、『やっぱ男の人には女物の折り畳み傘は小さかったかな……』とか思ったけど、お隣さんのガタイがいいだけか……と、勝手に納得しながら私は駅へ向かった。

・・・・それにしても、私との身長差を考えると、190㎝くらいはありそうだな、お隣さん。

身長が高くて、パッと見はスラッとして見えるけど、近くで見るとガッシリしてて、“あの人に殴られたら一溜りもないだろうな”……とか、めちゃくちゃ失礼なことを考えている私。


・・・・ていうか、『お前、危なっかしいな』と『気を付けろよ』って……どういう意味だったんだろう。


自分で言うのもなんだけど、そこまでどんくさい女じゃないし、別にそそっかしくもないし……私。

あの言葉の謎は深まる一方で、私の頭の中と心の中は、何を考えているか分からなくて、掴みどころのない、ぶっきらぼうなお隣さんのことでいっぱいだった。


「……ぶっきらぼうなヤクザ……かぁ」

「は?ぶっきらぼうなヤクザ?なに、急に」


──── 昼休み。


どうやら私の心の声が、だだ漏れになっていたらしい。


「あ、いやっ……違くて……」

「あ?なにがどう違うのよ。言ってみ?」

「え、えっとぉ……」
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