降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
いや、でも待って。

なんで私の家がここだって分かったの!?


──── 怖っ!!


怖いけど、家を特定できた理由がどうしても知りたい……というか、ぶっきらぼうさんが“何者”なのかが知りたい。

追及する?それとも、うやむやにする?


・・・・うやむやにするわけにはいかないでしょ。私の平和な日常を維持する為にも!!


「あっ、あのっ!!」


振り向くと、隣の玄関ドアに手を掛けているぶっきらぼうさんが、私の方へ顔を向けて、少し目を細めた。


──── ていうか、なんで隣の玄関ドアに手を掛けているの?


そこ、私ん家の隣だよね?

・・・・・・あれ、お隣さんって誰だっけ?お隣さんに会ったことあるっけ?…………ない。


「……えっと。そこ、誰の家ですか?」

「俺」


『俺』……とは?


「え?」

「あ?」


・・・・今まで生きてきた人生の中で、一番驚いていると言っても過言ではない。

こんな偶然ありますか?


「……お隣さん。ということですか?」

「そうなるな」


顔色ひとつ変えることのないぶっきらぼうさん。


「あの……つかぬことをお聞きしますが、ヤクザですか?」


“つかぬこと”すぎるし、間違ってたらかなり失礼でしょ!!

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