相会い傘歌
呆れられてる。

そう思って恐る恐る彼の顔を見上げると、意外なことに彼はホッとした表情をしていた。

水のように柔らかい表情だった。


「家は?」

「え?」

「どこ」

「えっと…」


突然の問いかけに戸惑いつつ、私は大雑把に家から最寄りの駅の名を告げた。

彼は了解したように一つ頷くと、


「駅まで送るよ」


と言った。

あたかもすでに決定事項だといわんばかりの断言だった。


「えっいや…、そんな…悪いですよ」

「なにが? …どうせこっちも電車だし」


なにがって……。

だって外はいま雨が降っていて、私は傘が無くて、それは彼も分かっていて、彼の手には傘があって、駅まで送るってことは途中まで一緒に帰るってことで、でも傘は一つしか無くて………。

ってことはつまり……?
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