本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第17章 8 そばにいるから
部屋に到着すると、亮平が段ボール箱を抱えて入ってきた。
「お邪魔するぞ」
「うん、散らかってるけど入って」
ダンボール箱を床の上に置いた亮平は部屋を見渡した。
「うわっ! 本当に散らかってるな!」
確かに部屋の中は引っ越しの途中で散らかってはいるけれども、一応は邪魔にならないように隅の方にまとめていおいたつもりだ。
「もう、失礼な事いわないでよ。仕方無いじゃない、引っ越しの途中だったんだから」
「ああ、まあそれもそうだよな? さて、鈴音。俺は一体何を手伝えばいい?」
亮平は背広を脱ぎ、部屋のフックに引っ掛けると尋ねてきた。
「それじゃ食器棚の食器を出して新聞紙で包んで段ボール箱に詰めてくれる?」
「分かった」
亮平は快く返事をしてくれるとキッチンに備え付けてある細長い食器棚から次々と食器を取り出し、床の上に置くと新聞紙でくるみ始めた。
そんな亮平を見ながら私は仕分けしておいた衣類を段ボール箱につめていく。
しばらく無言で2人で部屋とキッチンで別れて作業をしていると、亮平が尋ねてきた。
「鈴音、この新聞どうしたんだ? お前、ひょっとして1人暮らしなのに新聞取ってるのか?」
「まさか、取ってないよ。これはね、代理店で取っている新聞をもらってきたんだよ」
「ふ〜ん……そうか。ところで鈴音……」
「何?どうしたの?」
すると亮平が食器を持って私のところへやってきた。
「!」
その食器を目にして自分でも顔が青ざめるのを感じた。それは直人さんが使っていた食器だった。食器棚には全部ペアで買ったお茶碗やお椀、お箸に皿……全部揃っている。
「鈴音。この食器……どうするんだ?」
亮平が心配そうな顔をして私を見ている。
「あ……そ、それは……新しいマンションに持っていっても仕方ない……かな……? もう私には必要ないし」
「そうか? もしその食器を見ても辛くないって言うなら……持っていかないか?」
「え……?」
「ほら。今度引越し先は千駄ヶ谷に近くなるだろう? だからさ、たまに鈴音の新居に忍と遊びに来てもいいか?」
「う、うん。それは構わないけど……」
「そうか、そしたら3人でそこで食事するかもしれないじゃないか? そうしたら食器いるだろう……って鈴音……大丈夫か?」
「え……? 何が……?」
「何がって……おまえ、泣いてるじゃないか」
「え……?」
亮平に言われて自分の頬に手を触れて驚いた。私の頬は涙で濡れていた。
「ご、ごめん……泣くつもりなかった……のに……」
言ってるそばから胸に熱いものがこみ上げてきて涙がとめどなく溢れてきてしまう。
直人さんと2人。
この部屋で小さなテーブルを挟んで一緒に食べた食事。私の作った料理を、いつもいつも『美味しいね』と言って笑顔で食べてくれた直人さん。2人で雑貨屋さんへ行って選んだお揃いの食器……。
どうしよう。忘れなくちゃいけないのに、まだ心の中で私はこんなに直人さんを求めてる。
すると……。
「鈴音っ!」
突然亮平が私の名を呼び、きつく抱きしめてきた。
「鈴音……あんな奴の為に泣くな。俺が……お前の悲しみが癒えるまで側にいるから……」
「りょ、亮平……駄目だよ、それは……」
嗚咽をこらえる私。
「何が駄目なんだよっ!?」
「亮平は……お姉ちゃんの恋人なんだから……お姉ちゃんの側にいてあげないと……」
「ああ。その事だけどな……実は忍から頼まれんたんだよ。鈴音の失恋の傷が癒えるまで俺にそばにいてやってもらえないかって?」
「え……? お姉ちゃんが……?」
涙で濡れながら私は尋ねた。
「ああ、そうだ。それに鈴音が川口と付き合うきっかけを作ってしまった俺の責任もあるからな。お前が元気になるまでは側にいるさ。忍の許可も取ってあるんだから」
亮平は私の髪を撫でる。
「りょ……亮平……ありがとう……」
亮平とお姉ちゃんに心の中で感謝を述べながらも、私は思った。
やっぱり2人に迷惑はかけられない、早く立ち直らなければ――と。
「お邪魔するぞ」
「うん、散らかってるけど入って」
ダンボール箱を床の上に置いた亮平は部屋を見渡した。
「うわっ! 本当に散らかってるな!」
確かに部屋の中は引っ越しの途中で散らかってはいるけれども、一応は邪魔にならないように隅の方にまとめていおいたつもりだ。
「もう、失礼な事いわないでよ。仕方無いじゃない、引っ越しの途中だったんだから」
「ああ、まあそれもそうだよな? さて、鈴音。俺は一体何を手伝えばいい?」
亮平は背広を脱ぎ、部屋のフックに引っ掛けると尋ねてきた。
「それじゃ食器棚の食器を出して新聞紙で包んで段ボール箱に詰めてくれる?」
「分かった」
亮平は快く返事をしてくれるとキッチンに備え付けてある細長い食器棚から次々と食器を取り出し、床の上に置くと新聞紙でくるみ始めた。
そんな亮平を見ながら私は仕分けしておいた衣類を段ボール箱につめていく。
しばらく無言で2人で部屋とキッチンで別れて作業をしていると、亮平が尋ねてきた。
「鈴音、この新聞どうしたんだ? お前、ひょっとして1人暮らしなのに新聞取ってるのか?」
「まさか、取ってないよ。これはね、代理店で取っている新聞をもらってきたんだよ」
「ふ〜ん……そうか。ところで鈴音……」
「何?どうしたの?」
すると亮平が食器を持って私のところへやってきた。
「!」
その食器を目にして自分でも顔が青ざめるのを感じた。それは直人さんが使っていた食器だった。食器棚には全部ペアで買ったお茶碗やお椀、お箸に皿……全部揃っている。
「鈴音。この食器……どうするんだ?」
亮平が心配そうな顔をして私を見ている。
「あ……そ、それは……新しいマンションに持っていっても仕方ない……かな……? もう私には必要ないし」
「そうか? もしその食器を見ても辛くないって言うなら……持っていかないか?」
「え……?」
「ほら。今度引越し先は千駄ヶ谷に近くなるだろう? だからさ、たまに鈴音の新居に忍と遊びに来てもいいか?」
「う、うん。それは構わないけど……」
「そうか、そしたら3人でそこで食事するかもしれないじゃないか? そうしたら食器いるだろう……って鈴音……大丈夫か?」
「え……? 何が……?」
「何がって……おまえ、泣いてるじゃないか」
「え……?」
亮平に言われて自分の頬に手を触れて驚いた。私の頬は涙で濡れていた。
「ご、ごめん……泣くつもりなかった……のに……」
言ってるそばから胸に熱いものがこみ上げてきて涙がとめどなく溢れてきてしまう。
直人さんと2人。
この部屋で小さなテーブルを挟んで一緒に食べた食事。私の作った料理を、いつもいつも『美味しいね』と言って笑顔で食べてくれた直人さん。2人で雑貨屋さんへ行って選んだお揃いの食器……。
どうしよう。忘れなくちゃいけないのに、まだ心の中で私はこんなに直人さんを求めてる。
すると……。
「鈴音っ!」
突然亮平が私の名を呼び、きつく抱きしめてきた。
「鈴音……あんな奴の為に泣くな。俺が……お前の悲しみが癒えるまで側にいるから……」
「りょ、亮平……駄目だよ、それは……」
嗚咽をこらえる私。
「何が駄目なんだよっ!?」
「亮平は……お姉ちゃんの恋人なんだから……お姉ちゃんの側にいてあげないと……」
「ああ。その事だけどな……実は忍から頼まれんたんだよ。鈴音の失恋の傷が癒えるまで俺にそばにいてやってもらえないかって?」
「え……? お姉ちゃんが……?」
涙で濡れながら私は尋ねた。
「ああ、そうだ。それに鈴音が川口と付き合うきっかけを作ってしまった俺の責任もあるからな。お前が元気になるまでは側にいるさ。忍の許可も取ってあるんだから」
亮平は私の髪を撫でる。
「りょ……亮平……ありがとう……」
亮平とお姉ちゃんに心の中で感謝を述べながらも、私は思った。
やっぱり2人に迷惑はかけられない、早く立ち直らなければ――と。