浮気されて振られたが、ハーフイケメン外科医に溺愛されています。
 裏切られた上に明らかに馬鹿にされたのに。
 ひとまず頭を下げて看護部長室から出た。はぁっ~と深いため息を吐きながら歩くと、ひょこっと柚香が顔を出してきた。しかも得意げな顔をして。

「おはようございま~す。土曜の時はどうも。北澤さんが叩いたせいで頬が赤く腫れちゃって大変だったんですよ」

「……何が言いたいの?」

 わざわざそれを言うために来たの? もう出勤時間過ぎてるのに。
 すると頬を擦りながらクスッと笑ってくる。

「だから~看護部長にも言われたと思いますけど、謝ってほしいな~って」

「はぁっ? あなた自分が何をやったのか、もう忘れたの?」

「だから私は知らないって言っているじゃないですか~。それに叩いたのは事実なんですから、謝るぐらい人として当然じゃないですか?」

 まるで自分は非がないと言いたい態度だった。
 クスクスと笑いながら、そう言ってくる。まるっきり反省していないと発言に緋色の我慢は限界だった。

「いい加減にして」

 思わず大声で叫んでしまった。ハッとした時は既に遅かった。
 その声に驚いた職員や医師が廊下に出てきた。もちろん看護部長も。

「あなた達は、何を叫んでいるの!? 部屋まで丸聞こえじゃない」

「す、すみません」

 緋色は動揺して謝ると、そのまま逃げるように自分の部署に戻った。柚香は泣いているようだったが、そんな事を気遣っている余裕はなかった。
 デスクに戻ると、ドンッと机を叩いて座った。怒りと悔しさで押し潰されそうだった。涙を必死に堪える。
 このままでは自分が悪者みたいだ。浮気をされたのはこっちなのに。
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