同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
御曹司があらわれて
帆夏(ほのか)さん、君を探してここまできたんです」

ここまで、って。この田舎でオープンしたばかりの、知名度ゼロのカフェに? わざわざ?
私の手をしかと両手で包んで握ってくる彼は、外の牧歌的な景観にも、私の開いている店からも浮いている。

一言で要約すると、すんごい美形。

電車とか、人だかりとか、人がぎっしり詰まった場所にいても、持ち前の華で周辺の他人をモブに変えてしまうことだろう。
ドラマの主演をひとり現実世界でやっているような存在感の人。
玉石混合の中の、たった一つのダイヤモンドみたい。

セットされて乱れのない髪はさらっと艶があるし、上等な生地のスーツは彼の細身ではありながらたくましい体のラインでしっかり魅せてくる。
おそらく彼のためにあつらえられたものだろう。
身なりから、上流階級を日常の場とする人だと明らかだった。

そんな「同じ現実に存在したんですか?」と問いかけたくなる、幻想みたいな男性の瞳が、私を映す。

私専用のカメラにでもなったみたいに、その中心に映るのは私だけ。

力強くて澄んだ目は、特に彼のカッコいい部分で、うっとりしてしまう。
厚く魅力的な唇がまた開いて、整った白い歯をのぞかせた彼は、いま一度とんでもない口説き文句を紡ぐ。
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