同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
盗られたもの

バッグのショルダーストラップをぎゅっと握り、私は縮こまって歩く。
よく人から「きらきらして大きいね」って褒められる目が今は恨めしい。
涙なんか流したくないのに、全然いうこときかないんだもの。

今日、私は人生最悪に落ち込んでいる。
ライフワークになる、と思えるほど期待をかけ水面下で動かしていた研究を、同僚に盗られてしまったのだ。

私の研究分野の、発行されて間もない学術雑誌を手にとって見たときの戦慄。
自分が書いたものでは、と勘違いするくらい内容が似すぎていて、おもわず二度見した。
私はまだ掲載や査読どころか、論文を投稿すらしていない。
そろそろ、と用意していたそれが、もう雑誌に載っている。
この事実にめまいしながら、タイトルの下に入った著者名を見て心臓がギョクっと一跳ねした。
 
そこにあったのは同じ研究所の、同分野で働く同僚の名前。

自分の研究資料と比較しよう、机の鍵つき引き出しを勢いよく開け放った。
しかし、そこにあるはずの私の研究資料は、一切がなくなっていた。
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