旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 涙がこぼれそうになって、顔をそらした。
「いや」
 アーネストの低くて落ち着いた声が、オレリアの涙を誘う。
「閣下。そんなにリリーさんを睨まないでください。怖がってるじゃないですか。ただでさえ、顔が怖いって言われているのに」
「あ……そんなこと、ありません」
 オレリアはアーネストの顔が怖いと思ったことなどない。今だって、ただ懐かしいと思っただけ。
「美味かった……」
 アーネストはそれだけぼそりと呟くと、ジョアンの腕を引っ張って立ち去っていく。
「痛い、痛い、閣下、痛いです。暴力反対」
「いいから、お前は黙ってろ!」
 オレリアは彼らの背中が扉の向こうに消えるまで、ずっと見ていた。
 ――美味かった。
 その一言がオレリアの心を舞い上がらせた。もしかしたら、他の料理を褒めたのかもしれないけれど。
 オレリアが片づけのために彼らが使ったテーブルへと向かうと、二人分の食器は空っぽになっていた。きれいに食べてくれたようだ。つまり、オレリアの料理も食べた。
「はいはい、泣くんじゃないよ」
 エミも片づけにやってきて、オレリアの頭をぽんぽんとなでる。
「はい……」
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