視線の先にあるものは
「立てる?」
しゃがみ込んでいる私に差し出されている手を握って立ち上がる。
ちゃんと人の温かさを感じる手。いつの間にか雨は止み、右腕の痣はすっかり消えていた。

「あ、そうだ。明日、智ちゃんにもう大丈夫って言わなくちゃ。心配かけちゃったから。」

「だね。あとさ、ちゃんと報告しておいてよ。」

「何を?」

「観賞用じゃなくて、ちゃんと彼氏にも向いてるってさ。」

当たり前のように言われ、反応に困る。
「橘君、そんなキャラだったっけ?」

「好きな子のためなら熱くなれるタイプ。」
悪戯っぽく笑いかける笑顔にノックアウトされそうだ。

今日一日で橘君の色んな表情が見れて幸せだなぁなんて、どこか現実逃避している自分もいる。
情報過多で脳の処理能力が追い付かない。
今はこれを言うのが精いっぱい。

「帰り道ははぐれないでね。」
ぎゅっと、掴んでいた手を握りしめる。

雨が止んだ空から、木漏れ日が降り注いでいた。
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