このまま抱かれてしまいたい
 顔を覆っていた手の指の隙間から覗くと、彼は口に拳を当てて笑いを堪えていた。

「お客様に手を出してはいけないとずっと我慢してきましたが、もうその必要はないってことですよね?」

「え??」

「僕も沢田さんが好きってことです」

「え―――!?」

「いつも施術しているとき、沢田さんは考えていることが丸分かりなくらい反応がよくて、かわいいなと、思っていました。痛がったり、気持ちよさそうにしたり、不思議そうな顔をしたり」

 彼は眉尻を下げ、目を細めて笑った。

「ほら、今も顔が真っ赤になって」

 私はこれ以上顔を見られないために、彼に背を向けて横向き寝になった。

 くくくっと後ろで笑いを堪える声がする。

「施術は最後までさせてくださいね」

 私は彼に肩を掴まれ、ゴロンと仰向けに戻された。なんという羞恥プレイ。

「本日、施術の延長はご希望されますか?」

「次にお客さんいないんですか?」

「いたらこんなこと聞きませんよ」

「え、延長料金とその内容は…?」

「かかりませんのでご安心ください。施術中、いつも大半を痛そうにしているので、あなたをうんと気持ちよくしてあげたいな。ただし延長は、別のところで行いますが」

「あーえっと、よ、よろしく、お願いします」

 狼狽える私に対して、彼はいつもの穏やかな笑みをたたえている。いや、いつもと同じようで同じじゃない。その言葉の言わんとするところは、大胆かつ羞恥でしかない私の発言を受けているものだということを忘れてはならない。

 今夜の施術は長くなるらしい。
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