満天の君と、純白のヒメゴトを。
同じ世界に実在するとは信じ難い純度の高いの煌めきに胸が苦しくなる。冷静沈着・無表情の下にこんな無邪気さが潜んでいるなんて誰が想像するだろうか。いや、しない。

ときめき耐性が皆無なせいで胃痛に見舞われる己が情けない。でも会いたいって何ですか、『ちゃった』って何ですか。

真の意味で心臓を鷲掴みにされた私は、わなわなと震えながら何とか顔を上げる。

とにかく意識を体内から分散させよう。せめて何か話すんだ私。

「今日は、他に誰も居ないんだね…?」

一歩たりとも動いていないのに謎に息切れをかます女子相手でも、樹々瀬くんは朗らかさを保ち続ける。

「先輩たちは仕事ない日だから。太陽は部活動会議の司会進行にあたってるから視聴覚室に居るんだ」
「な、なるほど」
「だから今日は、二人きりだね」

だから何でそんなことを言っちゃうんですか!?

人知れず地団太を踏むことで、何とか煩悩を滅する。この勢いだと心臓が握り潰される。ここが私の終の棲家になるの不可避。

しかしそんな私の危機なんて知りようもない樹々瀬くんは、「ねぇ」と純真な眼差しで私を捕える。

「ひとみちゃんは何で俺のことを許してくれたの?」

清らかさはそのままに真摯な色を帯びる問い掛けは、
私に正気を取り戻させる。

「許すというか認める、というか。俺は今まで本当の自分を隠そうと必死で…まさか受け入れてくれる人が居るなんて思いもしなかったから」

許す、認める。

一高校生がそんな言葉を並べてしまうほどの彼の過去。その重みを私は未だ、ひと匙程度も理解できていない。

昨夜の心情の吐露は、「演じる」きっかけを説明するのに足る、選別された情報のみで構成されていた気がするし、実際、樹々瀬くん本人が「他にも色々重なって」と曖昧に濁した部分もあった。

「…許すとか認めるとか、そんな大層なことじゃないよ。私はただ」

あなたがあんまりにも哀しい光を携えていたから。

「樹々瀬くんに、笑ってほしいなって」
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