涙の流星

お店のお手伝い

夏海は、朝から定食屋のお手伝いをしていた。健次郎とは、あれから会えていない。
陸軍の訓練は、厳しいらしく1か月は、会えないのは当たり前のことだと良子から聞いた。
1週間前、良子に未来から来たことを打ち明けたが変わらず良子は、優しく接してくれる。
「夏海ちゃん、サバの味噌煮のお客様に運んであげて」
「はーい!」

お客様に運ぶと「かわいらしい子が入ったなぁ」と言われた。
常連さんなのだろう。良子は「そうよ。空襲から逃げてきて迷い子になってたからうちで雇ってるのよ」
と言ってくれた。
「大変だったな。名前は?」
「夏海です。」
「夏海ちゃん、俺たち会いに来てあげるから頑張ってくれ」

一見、大柄な男で怖そうだったが、内面はとても優しかった。
人は、見た目だけじゃないんだなと夏海は、改めて学んだのだった。

だいぶ落ち着き、客足もない時間帯。
良子は「ねぇ」と声をかけた。

「夏海ちゃん、未来で私と健次郎さんってどうなってる?」
「え?」

良子は、恥ずかしそうに聞いてきた。それから言葉をつづけた。

「私ね、健次郎さんが好きなの。幼いころから優しくて。私、小さいころよく男の子にからかわれて
泣かされてたの。それでよく健次郎さんが助けてくれて、気づいたら好きになってた。
告白したいけど、勇気は出ないまま健次郎さんは、兵隊さんになってお国のために戦うことになった。
戦争に行くものは、死者も出るってわかってる。それでも私は、好きなの」

良子の言葉に夏海は「大丈夫」と言った。

「ちゃんと結ばれてるよ。だからこうやって私が子孫としているんだよ。どっちがどう告白して結婚までしたのか
教えることはできないけど、大丈夫だよ」
「本当?ありがとう。私、いつか気持ちを伝えるね。」

良子は、笑顔で仕込みに行った。夏海は、掃除するために玄関へ行ったのだった。

あれから1か月たった夏日。良子から陸軍の兵隊さんたちがお昼ご飯食べにくるため、貸し切りになると聞いた。
お国のために戦ってくれる兵隊さんたちを気遣ってほかの客は来ないのだ。
「良子ちゃん、久しぶり」
「あら、長岡さん。久しぶり」

長岡さんと呼ばれた兵隊さんをはじめ、6人くらい来た。中には、健次郎もいた。
「夏海、良子。あれ以来だな。よかった。元気そうで」
「あれ?健次郎、お前、この可愛い子といつ知り合ったんだ?」
「空襲で逃げて迷い後になった子を保護したと前に話しただろう。忘れたか?」
「そういや言ってたな。」





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