振り向けば、キス。

⑤心配性な弟と言われても、


***


「――え?氷沙が行方不明?」


自宅に戻って来て早々、告げられた言葉は、現実感を伴わないまま、波樹の身体を通過していった。

「だって、楓がいたんじゃないの?何で?」


何時もだったら出迎えてくれる姉の姿がない。そしてその横に常にいる、ムカつくぐらい綺麗な顔の男もいない。

それがこんなに違和感があるだなんて。


「……それが、楓さんも体調が万全ではないところを襲われて。
しかも敵はうちの結界も易々と侵入を図ったみたいでして。今氷沙さんは楓さんが全力で探してくれています」


だから波樹さんは休んでいてください。そう続けて自分の肩に手を添えた水竜を波樹は無事だった方の左手で払いのけた。

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