振り向けば、キス。

④知られざること


「もう、目、開けてえぇよ」


その朱雀の言葉に氷沙が目を開けると、そこに広がっていたのは、歴史の教科書の中でしか見たことがないような風景だった。


道行く人々は、あまり上等ではなさそうな小袖を着ていて、なんだか疲れた顔をしている。

極たまに、雛人形の御内裏様の様な格好をした、どこかえらそうな人もいる。


「……あ、え!?」


道の真ん中に立ち尽くしていた氷沙の目前まで通行人が迫ってきて、氷沙は避けようとして、驚く。
避けきれず、ぶつかる筈だった肩は、何の衝撃もなく、代わりに氷沙の身体を、その通行人は通過していった。

< 259 / 366 >

この作品をシェア

pagetop