振り向けば、キス。

④偶然ではなく、それは必然。

名残惜しそうな氷沙を波樹の部屋に残して、楓は自室に戻った。


「――厄介やな」


知らず口をついて出てくるのはため息ばかりで。


あのあと、高原をたたき起こして聞いた話に、楓は嫌な予感に襲われた。


高原が匂わせていた、連続性があると言う今回の事件の真相、そして、高原自身の身に起こった現象について、絞れるだけ聞き取ってきたのだが。


――なんやねん、この感覚……。


今まで経験したことがないような、その感じは、まるで熱い塊が身の中から生まれて、転がり暴れているようで、背筋に冷たい悪寒が走ったようでもあった。その相反した感触は、なんだかとてつもなく、嫌な気配がした。


何が、これから先起こるというのか。

こんなに恐ろしく感じたのは、このときが初めてだった。
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