この度先輩のご飯係になりました~私と先輩の幸せレシピ~

「い、いおり先輩、どうでしょうか?」

 感想が気になっておずおずと声をかけると、先輩がちょうどかきたまうどんを食べ終えるところだった。

「美味しかった……」

 いおり先輩はどんぶりに目を落としながら、そう小さくつぶやいた。

「本当ですか! よかったぁ~」

 わたしはほっと胸をなでおろす。

「ほうれん草入りのかきたまうどん、おいしいですよね! わたし、小さい頃よく風邪で寝込むことがあって、その度に母が作ってくれたんです。熱が出てしんどくても、母の作ったかきたまうどんが食べられるから、ちょっと楽しみだったりして」

 小さい頃のこと、母のことを思い出しながら、わたしは優しい気持ちになる。

「わたし、ご飯を食べるのが大好きなんです! おいしいものを食べた時の思い出や、うれしい気持ちも一緒に思い出せるから。わたしもそういう温かいご飯が作れるようになりたいんです。いおり先輩はご飯に興味ないって言ってましたけど、少しでもおいしいって思ってもらいたいな、元気になるといいな、って気持ちで作りました!」

 体調の悪いいおり先輩が、ご飯を食べて元気になって、ご飯を食べるって楽しいことなんだって思ってくれたらうれしい!
 わたしの言葉を静かに聞いていたいおり先輩は、穏やかに微笑んだ。

「こんなにご飯がおいしいと思えるのは久しぶりだった。うちは両親がいつも忙しくて、一緒にご飯を食べる機会がどんどん減ってしまったんだ。そのうちご飯なんてどうでもいいかな、って思うようになってしまった。わざわざ自分一人のために作るのも面倒だし」

 いおり先輩は顔を上げると、わたしをしっかりと見すえた。


< 9 / 138 >

この作品をシェア

pagetop