交際0日婚でクールな外交官の独占欲が露わになって――激愛にはもう抗えない
「大丈夫じゃねーだろ」

 右腕を強く引かれ、思わず振り返る。見上げた旭飛は、怒ったような、怖い顔をしていた。

「映茉はいつも、自分を犠牲にしすぎなんだよ。お前の優しさに、救われるやつもいると思う。でも、今は違うだろ。我慢すんなよ。何で新婚なのにそんな大泣きしてんだよ。おかしいだろ」

 強められた彼の言葉に、思わず身体ピクリと震えた。

「……そうだよね、おかしいよね、私」

 ぽつりとこぼす。旭飛が、息を飲むのが分かった。

「愛のない結婚だって分かってたのに、愛されたいって思っちゃうなんて」

 ハリボテの幸せは、幸せなんかじゃない。
 〝幸せな家庭〟になるように〝努力する〟だなんて、最初から無理があったんだ。

 どうして、気付かなかったのだろう。
< 166 / 251 >

この作品をシェア

pagetop