悪役令嬢が書きたくて

23 エピローグ

 あたしは大学入学と同時に、自分のパソコンを買ってもらった。そして、念願の一人暮らしも始めた。高校生のとき、あのゲームセンターでゲットしたマルも連れて行ったから、寂しくは無い。
 処女作である「悪役令嬢に転生しましたがヒロインが可愛くて困ります」は、まだ続いている。途中から閲覧数も跳ねて、ランキング上位に食い込むようになった。書籍化も夢じゃないかもしれない。
 大学では、特にサークルには入らないことに決めた。それよりも、アルバイトを始めたかったのだ。働いて、人生経験を積むことで、小説に役立てようと思った。
 新居に越して落ち着いた頃、あたしは飲み物を確認していた。新しく買ったティーポットで、アールグレイを淹れるのだ。
 お昼過ぎ頃、チャイムが鳴った。

「優衣さん、来ましたよ」
「優衣ちゃーん! 久しぶりー!」
「よっ、優衣」

 三人の先輩たちとの仲も、こうして続いている。今になって分かったことだが、瑠可先輩のあのときの質問は、「文芸部の三人の中で誰が一番好きなのか」ということだったらしい。

「先輩たち、ようこそ!」

 思えばあの頃は、あたしも鈍感すぎた。彼らは本気で、あたしのことを女性として好いていてくれていたのだ。そして、それはきっと今も。

「わっ、可愛い部屋! 優衣ちゃんらしいや!」
「そうですね。本当に優衣さんはセンスが良い」
「どーせ慌てて片付けしてたんだろ?」
「もう、先輩たちったら」

 先輩たちの気持ちがちゃんと分かった今も、あたしが一番好きなのはエレノアだ。だって、選べないもの。三人とも、あたしの大好きな先輩たちなんだから。
 


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