『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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 毎日欠かさずニュースを見ていた百子は
武漢から出たウイ○ス騒動を受け、瞬時に動いた。

 離婚届けは百子が決めた時に出していいことになっていた。
 年明け6日に離婚届けを役所に一人で出しに行った。

 夫であった伸之に婚外子などなく、離婚を突き付けられていなければ、
これまでノータッチだった伸之の仕事に関与し、先でどのようなリスクが
あるか、きっと自分は告げただろうと思う。


 というのも、この時百子は会社の存続の危機をいち早く危惧していたからだ。

 伸之はすでに5年前から家を出ていていない。

 伸之は果たして……今の騒動の始まりがどれだけすごい波で会社の事業に
襲い掛かってくるのかということに、気付いているだろうか。

 そのように百子が危惧しているうちにも、すでに日本でも横浜港を出港した
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の船内で恐るべき危機に見舞われる
ことになるのだった。

 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客で1月25日に香港で下船した
80代男性がCO○○D―19に罹患していることが2月1日に確認されたからだ。

          ◇ ◇ ◇ ◇


その後、百子の危惧していたことが国内外経済全般で起こり始め、
主力は高級時計・ジュエリーそしてその他にはアパレル・バッグなどを
取り扱っている伸之が父親から継いだ石田貴金属(株)もまた例外ではなく、
船で例えるなら大海原でゆらゆらと揺られ続けていた。



 中国景気の減速に伴い、輸出の悪化。

 スマートホンの台頭やコロナ禍により伸之の会社でも遅まきながら
他社より一歩遅れて通販に切り替えるという策を取るのだが、業績は
思うほど伸びず芳しくなかった。


 伸之の取り扱っている物販の主力商品が腕時計やジュエリーという高額品で
実物を直に手に取り触ってみる、あるいは試着してみる、その上で購入を
決めたいというニーズが他の商品よりも高い傾向にある為、遅れて通販に
乗り出したという経緯があった。



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