『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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 容姿端麗で性格もこんな積極的ではっきりしている人間、
危ないでしょ……どうみてもね。

 私勝てる気しないしぃ。


 理子は綺麗な顔をしていて目はくっきり二重瞼で
ナイスバディをしている。

 もう30手前の29才ってことで去年あたりからお腹やわき腹のぜい肉を
吸引して取ったり、瞼の幅を広げたりとかなり美容にお金を
つぎ込んでるらしい。


 何事も堂々とやるので、ある意味その行動力と
あっけらかんとした性格が羨ましい。


 私など、お金もないけど自分のぜい肉の付いた身体を
相手が医師と言えども恥ずかし過ぎて見せられないよ。


 瞼整形して綺麗になるのも抵抗がある。

 医師や助手が自分のことをどういう風に見てるんだろうって思うだけで
もう駄目っ。

 彼女見てると『かなわん』って思う。



 しかし、山下さんったら私からの情報はちゃんと生かしてたんだ。
 ちょっと考えてしまうな。


 私からここの情報聞き出してた時、すでにさっきの女性(ひと)
思い浮かべていたんじゃないかと。


 私の誘いには乗らなかったのに彼女のことは誘ったのだ。
 そのことが少しチクリと胸に刺さった。


 彼女はどう見ても私より一回りは確実に上の年齢に見える。
『おばさん』に負けたのだという現実が私を打ちのめした。


 そんな風に考える自分が嫌な人間だなって思うけど、
どうしようもなかった。


          ◇ ◇ ◇ ◇



◇思いを寄せていたのに

 
 島本亜弥子には入社してから数年間、ずっと気になっている男性(ひと)
がいる。


 会社のイベントなどではなるべく話ができるようにいつも山下の
近くにいるようにしている。

 だが、なかなか話し掛けるきっかけが掴めず苦戦していて、二人きりで
話したことがあるのは後にも先にも一度、たった一度だけ。

 他にもたくさんの社員がいる中、社内で行われたクリスマス会のあった日、 
 不自然にならないように少しずつ間合いを詰めて山下の隣をキープすることが
できた。


 飲んで食べて無礼講みたいな空気感の中、かつてないほど
彼と会話を楽しめて幸せだった。


 だから何かその先の進展を期待したけれど、何もなかった。
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