『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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 だがそれほどまでに非常識な言動をする父親に反発をし、できるわけがないと 
考えていたものの、時間をおいて数日が過ぎてみれば、もしかしたら、
それもありかも……と思えるまでに考えが変わった。


 調子のいい、虫のいい話だと思うが、百子がこちらを許す気があるのなら
それも一興(悪くはない)だなと。


 もちろんこんなことを考えられる父親も自分も諸共最低の人間であることは
重々承知のこと(うえ)だ。


 だがそれだからと言って伸之は重治の言葉をまるっと鵜呑みにして
愚直に……単刀直入に……百子に再婚を申し込むほど愚かではなかった。

 さて、どうしようか。しばらくの間悶々と伸之は考えた。

 翌月から、アルバイトだが配達の仕事が見つかり働けることなった。


 それで初めての給料が出た数日後に様子伺いも兼ねて伸之は3万円と
少額ではあるが返済を兼ねて百子を訪ねてみることにした。



 本当は行く前に連絡を入れてからのほうがよかったのだろうけれど
実質離婚しているとはいえ、訪ねるのは昔自分が住んでいた家で
元妻は独り身ゆえ家族構成も昔のままだというのも頭にあり、今回は
金を借りにいくのではなくて返済に行くということもあって、連絡など
しなくても大丈夫だろうという思いがあった為、突然の訪問をした。



 やはり、元妻は在宅しており、驚いてはいるものの今日は少しばかりでは
あるけれど返済に来たのだと伝えると、すぐに彼女は顔を見せた。


 リビングダイニングのテーブルに着くとどうやら今日はたまたま
娘も息子もいたようで百子が娘たちに声をかけた。
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