口に甘いは腹に毒
🎂





「……はあ?」



 久しぶりに聞いた玉露くんの低い声。



「なんでいるんですか?」

「なんでって。愛しの後輩に会いに来たんだが?」



 それは、教室にやってきた那由多先輩に対して向けている。

 あれから連絡を取っていないから、てっきり疎遠になっていくものだと思っていたのに。

 那由多先輩は冬休みを明けた後も、変わらない様子で挨拶してきた。


 ……う、わたしも気まずいよ。

 だって振った相手だもん。その上、玉露くんに振られてくるって言ったくせに、両想いになれちゃったんだもん。合わせる顔がないよ。

 なんで那由多先輩はこんなに普通なの……?



「苹果ちゃんのこと諦めたんじゃ……」

「ん? 別に諦めてないぞ?」



 けろりと言い放つ那由多先輩。

 玉露くんがわたしの肩を引き寄せる。



「あげませんけど」

「奪えばいい話だな」



 二人が火花が散らす。

 那由多先輩はにこにこしていてご機嫌だ。

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