シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

うちのホテル

　彼が言った通り、⼗分も経たずに⽬的のホテルに着く。
　海に⾯した⾼台の上に建つホテルは真っ⽩な壁と⼤きなガラス窓でできた瀟洒な建物だった。いかにも⾼級そうなリゾートホテルだ。
　⾞寄せに停まると、ドアボーイが⾞のドアを開けてくれる。
　降りた颯⽃はボーイに⾞のキーを渡し、⼀花に⼿を差しだした。
　その⼿を取り、⼀花は⾞を降りた。
　すたすたとロビーに⼊ってきた颯⽃を⾒て、コンシェルジュが駆けよってくる。
　そこは⽩い⼤理⽯の床と壁に加え、円柱に⽀えられたアーチ壁が優美で、ヨーロピアンな雰囲気だった。

「副社⻑、お疲れ様です！」
「⾬に降られてしまって。部屋を⽤意できるか？」
「もちろんです」
「ランドリーサービスも利⽤したい」
「承知しました。係りの者をお部屋に伺わせます」

　颯斗とコンシェルジュのやり取りを聞いていたフロント係が部屋のカードキーを持ってくる。

「ラグジュアリースイートをご⽤意しました」
「ありがとう」

　カードキーを受け取った颯⽃が⼀花の背中を押して、エレベーターホールへと誘導する。
　ただならぬ⾔葉が聞こえたと⼀花は唖然としていた。

（スイートの上にラグジュアリー？）

　ロビーからしてすでに⾼級感が漂っている。
　そんなホテルのスイートはいったいいくらするのだろうと⼀花は⾝震いした。
　それを勘違いした颯⽃が眉を下げて気遣ってくる。

「寒いか？　部屋に着いたらすぐ⾵呂を⽤意してやる」
「い、いいえ、そんなすごいところを⽤意してくれなくても……」
「空いてるんだから、俺たちが有効活⽤してやるのもいいだろう？」

　遠慮している⼀花を強引にエレベーターに押し込み、颯⽃は部屋に連れていった。