傾国の貴妃
「……どうしよう」


ここ数日、漏れ出る言葉はこんな溜め息混じりの言葉ばかり。

それもこれも、あと数日に迫った新年のためのパーティーのせい。

そこで避けられぬであろう数々の憂鬱事に、今から不安で仕方なかった。

目の前には輝かんばかりの純白のドレス。

それもこの憂鬱な気分の原因の一つ。

本当は喜ぶべきものに素直に喜べないのは、このドレスを贈ってくれた張本人の気持ちがわからないからなのかもしれない。

どうして白を選んだのか。

私が本当に白に身を包んで良いのか。

聞きたいのに、聞けない。

昔は毎晩のように共に夜を明かしたギルは、ここ最近パーティーの準備のため忙しそうで、会えない日々が続いてた。

こんなに長い間、愛しいギルの顔を見ることさえないなんて、今までになかったこと。

私は不安に押し潰されそうだった。
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