傾国の貴妃

王の贄

とりあえず、深呼吸。






「ご無沙汰しておりましたわ、陛下」


数日前に遠目で見た男が、今は私の目の前にいる。

一年前、王座から私を見下ろしていた男が、目の前にいる。

なんだかそのことが妙に不思議で。

そんな私も滑稽で…




近くで見ると、ますます顕著になるその彫刻のような美しさについ圧倒されてしまって。

まるでそれは一種の夢物語。




悲しみと喜びが入り混じったこの嫌な気持ちさえも、吹き飛んでしまったかと思った。
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