傾国の貴妃
「ルシュドの姫様はこちらで何を?」


「…夕日が、とても美しかったので」


まだ少し際に朱みの残る空を眺めながら答える。

それもすぐに消えて、次の瞬間には無数の星が夜空を埋め尽くすのだろう。

そんな私の答えにエリザベート様は興味無さそうに「そうですか」とだけ呟くと、側に控えていた侍女に一言二言小声で何かを告げるのがわかった。

それからまたすぐに私に向き直り、にこりと特徴のある艶やかな笑みを浮かべると、その赤いルージュの輝く唇を開く。


「夕食はもう召し上がりまして?」


「いいえ。これからですが…」


「まあ!ちょうどいいわ。良ろしかったら、私とご一緒しません?」


「え?…私が、ですか?」
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