おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~
二章-森の住人

いざ森へ

 歓迎パーティーも終わり、また数日が過ぎました。
 この世界へやって来て一週間程度が経ったところです。
 そろそろ、カルアさんの言う“幸せにしたい”という願いを叶えるためにも動き始めなくてはなりません。
 なんたって、私はそのためにいるのですから。

「……やっぱり最初に出会いましたし、シラユキさん、シェルディさんとお話がしたいかもです」

 出会い方は不本意でしたが……。

「さて、今日も楽しく過ごせますようにっ」

 私はえいえいおー! と一人、部屋の中でやる気を出します。
 そんな時、ふらっとモランゴさんが現れます。

「おはよ、マリアちゃん」
「あ、おはようございますモランゴさん」

 最早慣れたものです。私は動じずに挨拶を交わしました。

「カルアで慣れてるでしょ」
「えぇ、かなり慣らされました」

 実は、モランゴさんが現れるのは二度目です。
 一度目はカルアさんじゃない? と驚いてしまったのですが、二度目はもう大丈夫です。

「一人で森に行くんでしょ? だからこれ」

 そう言って差し出してきたのはバタフライナイフでした。

「……何故?」
「何かあった時に使えるでしょ?」
「そんな危険、あの森にあるように思えませんが」

 シラユキさんとシェルディさんも住んでいるくらいです。
 私は半信半疑になりながらも一応受け取ります。

「でも、何も持ってないよりマシだと思うよ。か弱い女の子だもん」
「…………確かに?」

 とはいえ、既にいろんな所へお邪魔している身。
 そして、ほとんど死なないご都合主義な夢の世界。
 何とかなる気がしますが、彼の言うこともあながち間違っていないでしょう。
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