朱の悪魔×お嬢様
「大変っもうこんな時間だわ!お家の方が心」

「あぁ、大丈夫ですよ」

 美玖が凜の言葉を遮る。

 え、と思ったがその言葉で凜は思い出した。

 美玖に両親がいない事を。

 でも、一人暮らしをしている訳ではないのだろうから、どちらにしても家にいる方が心配するだろう。

「大丈夫じゃないでしょ!早くお家の方に連絡しないと…。私が引き止めてしまったんだから私からお家の方に連」

「だから!大丈夫です!!」

 あの美玖にしては珍しい、突然の大声にびくりと身体がはねる。

 振り向くと美玖が肩で荒い呼吸をしていた。

 驚きで固まる。

「大丈夫、です。電話しても家には誰もいませんから」

「え?…あ、もしかしてお仕事中…」

「違います」

 本気で混乱し始める凜。

 美玖は深呼吸を一つして落ち着きを取り戻してから話した。

「私、一人暮らしをしているので、家には誰もいません」

「でも、あなた中学生よね?」

「はい。マンションには祖母と二人暮らし、となってます」

 凜は絶句する。

 つまり、嘘をついて中学生が一人暮らしをしているという事か?

「生活費とか、家事とかは?」

「家事は小さい頃からやってたのである程度出来ます。お金は『本家』から送られてくるので」

「『本家』?」

「…」

 その質問には答えない。視線を若干凜から逸らしていた。

 言いたくないのだろうか?

「あ、ごめんなさい。ちょっと聞き過ぎたわね」
 
 他人のくせに、と反省する凜。

 それにしても、中学生でしかも女の子が一人暮らしをするのは危険すぎる。

 美玖のような美少女ならなおさらだ。

(なんとかならないかしら…)

 もともと世話焼きな凜は知ってしまったからにはなんとかしたいと思う。

 数十秒間考え込む。

 沈黙が落ちていた。

 美玖が長い沈黙に耐えられず、何か言おうとした時

「そうだわ!!」

 突然凜が手をパンッと叩く。
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