朱の悪魔×お嬢様
 そんな美玖はもともとここにいたわけではなく、最近この小鷹(こだか)中学校に転校して来た転校生だった。

 『転校生』という言葉に『美少女』が加わって、校内ではかなり注目されている。

 しかし当の本人は無遠慮に見てくる視線に対し、うんざりを通り越して「もうどうでもいい」と無視する事を誓っていたが、そんな事を知る人は1人もいないだろう。

 美玖について話していた少女達の話題はしだいに美玖からずれていき、友達の愚痴や昨日見たテレビの話など、他愛の無いものになっていった。



*-*-*-*-*-*-*-*-*



 学校を出て帰路についた美玖は今日の予定について考えていた。

(えーと…帰ったら本屋に行って、帰りに買い物をして…あ、今日は『本家』に行く日だ…)

 その事を思い出した美玖は苦い顔をする。

 美玖は『本家』が苦手だ。むしろ大嫌いだった。

 あそこに居る人は皆、美玖を冷たい視線で見る。

 でも、月に一回行くという祖母との約束があるから、行かない訳にはいかない。

 急に気分が重くなり、自然と歩く足も遅くなった。

 俯きながらゆっくりと歩いていたが、いずれは家に着く事も当たり前で、ついに美玖の住むマンションへと到着してしまう。

 学校から30分くらいの距離にある、シンプルなデザインの白いマンション。

 マンションの敷地内にあるちょっとした公園では住人の小学生が数人遊んでいた。

 美玖を見つけると笑顔で「こんにちは!!」と挨拶をしてくるが、美玖は軽く会釈をするだけだった。小学生達は特に気にした風もなく、遊びを再開する。

 マンションの奥の方にあるエレベーターに乗り込むと、最上階の10階を押した。

 軽く振動がした後、滑るようにエレベーターが動き出す。

 美玖は壁に背中を預けて到着を待った。

 エレベーターは数十秒後にもう10階に着き、軽い振動とともに止まってからドアが開く。

 10階の一番奥の部屋、そこが美玖の住居だ。

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