この関係には名前がない
『栓抜きの音が聞こえちゃって。ご一緒させてもらえないかなーって』
ビールの缶を掲げて見せる。

『ほんと好きっすね、酒』
『お酒というか、ビールというか』
『何照れてるんですか、ほめてないですよ』

『えへへ』と笑った私に、するどいつっこみが入る。
その瞬間に〝この人とはウマが合う〟って気がした。

『いつもベランダで飲むんですか?』
『いや、梅雨も明けて風も気持ちいいから今日はここで飲もうかなって』
たしかに顔に当たる夜風が優しくて気持ちいい。
『そっちは? ベランダでもよく飲むんですか?』

ベランダ〝でも〟……キレのある的確な嫌味。

『私本当は外で飲む方が好きなんですけど、あれ以来宅飲みばっかりで。でもベランダで飲んだことはないです』

だからなんとなく、今日私がいる時間に真下さんがベランダの窓を開けてくれたのがうれしい。

『雨ばっかで居酒屋行くのがダルかったとか、そんな理由なんじゃないですか?』
『違います……反省してるんですよ、これでも』
しゅんとして、なぜか笑われる。

『とりあえず乾杯しませんか? 木崎さん』

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