悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 彼は「よっす!」と片手を挙げて、きらきらまぶしい笑顔を向けてきた。それを見て、周りにいた新一年の女子生徒がぽっと顔を赤らめたようだ。

「おはよう、先生! こうして先生と一緒にいられること、嬉しく思うぜ!」
「おはようございます、ベイル君。私も皆の授業を持てて嬉しいです」
「そうだろそうだろ? ……オレも夏には十八歳の成人になるし、ますます先生と親密な関係を築きたいなぁ、と――痛い痛い、抓るのはやめてくれるかなぁ、エル?」
「……あんたにその名前を許した覚えはない」

 ディアナには見えない位置の肉を抓られたらしいリュディガーが大げさにもだえ、エルヴィンが冷めた顔でそれを見ている。

 この二人の関係は、二年生になっても変わらないようだ。

「いつも仲がいいですね、あなたたちは」
「いや、これのどこが仲よしなんだ?」
「俺も同意見です。これと一緒にしないでください」
「これ扱いしないでくれるかなー、エル。……それより先生、そろそろ一緒に教室に行き――」
「……あっ! イステル先生!」

 軽い足音が聞こえて、ツェツィーリエとレーネとエーリカ、ルッツがやって来た。

「おはようございます。今年度も先生と一緒に過ごせること、わたくしも嬉しく思います」
「おはようございます。私も、皆の卒業まで一緒にいられて嬉しいです」
「そうよね。あたしたち、もう一年したら卒業だものね……」
「ちょっと、エーリカ! これから新学期なのにもう卒業式について想像しているの!?」
「さ、さすがに早いような……」

 口々に言う皆は、やはりいつも通りだ。

 これから彼らと一緒に勉強をするのは、あの狭い部屋ではない。
 だが、あの半年間で培った信頼関係はきっと、これからも続いていく。

「……そろそろ教室に行こう、先生」

 大時計を見上げたエルヴィンが言ったので、ディアナは頷いた。

「ええ、行きましょう。……皆で」

(そう、私たちはこれからも一緒に、頑張っていく)

 ディアナを中心にした元補講クラスの六人は賑やかに笑いながら、桜の花舞う校庭を歩いていった。
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