騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

6.秘めた想い


「で、ウチのお転婆はどこのどいつだ?」

「……あはは~」

「あははじゃないわこの野郎」


 その後、第三王女殿下は怪我なくお部屋にご移動なさったそうだ。そして、私が捕まえたあの犯人は、取り調べのため第一騎士団が護送し牢屋に入れられた。

 私も当事者の為事情聴取を受け、副団長が迎えに来てくださったわけだが……何ですその態度。面倒くさいと顔に書いてあるのですが?


「アイツ、どうせお前が捕まえたんだろ。第一騎士団達が自分達で捕まえたなんてほざいてるが、嘘が見え見えなんだよなぁ……危うく笑うところだったよ」

「……面倒なんで放っておきましょう」

「お前の手柄なのに?」


 まぁ、確かに私が捕まえたわけだけど……こういうのはもう慣れた。去年の狩猟大会とか、3つの騎士団合同でやる任務とかではこんなのはザラにある。だからもう面倒になったというか、何というか。

 それよりも、犯人の事だ。王城に入れたとあれば、この王城の警備を今以上に強化していかないといけなくなる。となれば、そんなお遊びに付き合っている暇なんてどこにもない。


「それで、取り調べはどうなりました?」

「あぁ、それについてだが……しない事になった」


 ……は? 取り調べを、しない? なんで?

 副団長によると、今回狙われたのは第三王女。だからそのまま身柄を渡すようあちらから口を出されたそうだ。隣国からの要求であるからこちらもそれを飲まざるを得ず、王女方のお帰りの際犯人の身柄も一緒に運ばれる事となった。


「まぁ、あちらの問題であるならば他国に知られちゃまずい事もあるだろうしな。だが、捕まえたのはこっちだ。俺個人としては、あの決定は頭にくるな」

「でも相手は友好関係を結んでいる国です。問題は起こしたくないでしょう」

「国際問題には持っていきたくない、が本音か。政治は難しいな」


 これは憶測でしかないが……実際に剣を交えてみて、あの犯人は隣国の出身だと思った。顔つきもそんな風に見えた。けれど、あの日焼けの事を考えると、今回の使節団に護衛騎士として紛れ込んでいたことになる。となれば、国として問題になる事になる。

 それが本当であるなら、確かにこちらの国にあまり知られたくない事ではある。とはいえ、予測は出来てしまっているためあまり隠せないだろうけれど。

 政治というものは難しいな。

 でも……妙に引っかかる。あの剣の太刀筋。あれは本当に、綺麗で洗礼されていた。また剣を交えたいとまで思うほどに。……口には出せないが。


 その後すぐに陛下方やご来訪されている王族の方々の警備が強化された。明後日の朝にはお帰りになるため、それまで気を抜かずに警備を怠らないようにと各々の団長達に言われ騎士団の者達もより一層気合いを入れている。

 今は一日遅れで来訪した第二王子を交えてのパーティーが行われ、私達は警備に力を入れていた。昼時にあんな事があったものの、被害者となられた王女殿下は問題なくご参加いただけたそう。王族も大変だ。

 けれどこの持ち場である会場近くの庭園には、私一人。さっきいた先輩はデカルド団長に呼ばれて行ってしまったからだ。

 置いていかれた私は一人寂しくここに立ち警備をしている。一人でいると、余計な事を考えてしまう。今回捕まえた犯人の事、そして……あのハンカチと懐中時計の事。けれど今は任務中。余計なことは考えるなと自分を叱りつけていたその時だった。

 ふと足音が聞こえてきた。先輩が帰ってきたかな、と思ったけど、振り返り顔が引きつった。
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