騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 でも、視界に入れないというのは、さすがに無理がある気がする。そもそも、侯爵家当主の団長様でも王族相手には敵わないはずだ。というところで、思い出した。そういえば、団長様は彼の前で詰めが甘いと言っていた。

 それに、あの話はもしかして以前の潜入捜査で捕まえた外国人商人の事なのではないだろうか。隣国の国王陛下に、文書を送ったと言っていた。一体どんな内容の文書だったのだろう。聞きたいところではあるけれど、聞いてはいけないような気もする。

 けれど、団長様だけを見ればいい、だなんて……どうしたらいいのか分からないけれど、何故か嬉しくもなってしまう。

 こんな時に何を考えているんだろう、自分は。


「どうした、テレシア」

「えっ、あ、いえ、何でも……」

「いいよ、何でも言ってくれ。何でも答えるから」


 何でも、いいんだ。

 ちょっと、いや、さっきのでだいぶ怖かったけど……今の団長様は、とても優しく感じる。

 だから、だろうか。口からポロリとこぼれた。


「……私のところにいては、第三王女との婚約に……」

「婚約? 婚約届にサインすらしていないが?」

「……する予定、では?」

「するつもりは毛頭ない」


 そうはっきり言った団長様は、眉間にしわを寄せさも嫌そうな顔をしていた。自分の立場を踏まえて、そう言っているのだろうか。


「テレシアがいるというのに、するわけがないだろう。陛下に言われても断るつもりだが?」


 ここまではっきり言われてしまうと……顔が火照って仕方ない。
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