騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

7.近衛騎士団長の想い


 王城騎士団唯一の女性騎士、テレシア・マーフィスの事は、目に入っていた。


「女性ではありますが、周りに負けず劣らずいい働きをしてくれていますよ。自分の力量を十分に理解している。さすが、元近衛騎士団員であるマーフィス男爵の娘です」


 第三騎士団長にそこまで言わせるような人物だった事に、少し驚いた。

 女性騎士はこれまでにも何人かいた。だが、すぐに辞めていくのが普通だった。どうせただのご令嬢のおままごと、という認識ではあった。

 父親はあの優秀な元近衛騎士の騎士団員であり、騎士団を抜ける際には騎士の役職だけは残してほしいと国王自ら言い出すほどの力量と、信頼を得ている。

 とはいえ、所詮彼女は女性。騎士の才能はあったとしても、そもそも男性と女性では力が違う。

 だが……彼女は辞めなかった。大きな怪我をした報告もない。

 女だからと舐めるな。

 まるで、そう言っているような気がした。

 そして、実際に会った彼女は……


「……そんな所で寝たら風邪を引くぞ」


 ベンチに寝っ転がり寝息を立てていた。

 最近事務作業が多く外の空気を吸いに歩いていたはずが……まさか顔を真っ赤にして寝る彼女と遭遇するとは。しかも、酒の匂いがだいぶするから泥酔でもしているのか。

 一体どれだけ飲んだんだ……明日の仕事に響かなければいいが……

 半分呆れつつも、肩を揺すり起こした。ようやく目を開けた彼女は、私をじっと見つめてくる。


「はぁ……女子寮か。一人で帰れるか」

「……なによ、あんたも見下してるの?」

「は?」


 いきなり上半身を起こしたと思ったら、私の胸ぐらを掴んできた。

 呆れて気が抜けていた、というのは言い訳になるが、内心驚愕している。完全に、油断していた。

 女性騎士を目の前に、油断した? 何故?


「ど〜せ私は女っ気のないただの男女(おとこおんな)ですよ!」


 その勢いに、掴んでいるこの手を払う事を忘れてしまった。

 ……男女、とは。


「どうせ私は……他とはかけ離れた、残念な女よ……」


 今度は泣き上戸か……と呆れてしまうところではある。それに、ここは野外。こんなところを見られてしまえば近衛騎士団長という名に傷がつく。

 けれど、何故かそれはどうでもいいと思ってしまった。
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