騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
「おっと、もう限界かな? テレシアがこれ以上可愛くなる前に戻ったほうがいいかな。では国王陛下、王妃殿下。私達はこれで失礼いたします。此度の件は私の方でしっかりと処理いたしますのでご安心ください」
「あぁ、分かった」
「またね、テレシアさん」
とても楽し気なお二人に会釈し、下がった。その下がる理由の方が恥ずかしすぎてもう全力疾走で会場を出たい気持ちに駆られる。
早く会場から出てしまいたい、と思う反面、この夢から目覚めたくないからまだこのままにという気持ちもある。
けれど、周りの目というものもあるわけで。だから団長様に手を取られつつ、一緒に会場を歩き扉を通った。
ようやく息が吸えたような気分だけれど、一体どうしてこうなったのか分からない。それに……まだ分からないことだらけでもある。
「あの、団……リアム」
つい、団長様が出てきそうになる。さっきは貴族達の前で言えたけれど、それでもやっぱりまだ恥ずかしい。さっきはよく言えたな、とまで思ってしまいそうだ。
対する団長様、リアムはとても上機嫌にこちらを見てくる。婚約を約束出来たから、なのだろうけれど……
「あ、あの、さっきの陛下と第三王女殿下の件を……聞いてもよろしいですか……?」
「テレシア」
「……教えてください」
「あぁ、いい子だ」
もう絶対に他人行儀な態度は取らせない、と顔に書かれているような気がするのは勘違いだろうか。まぁ、今周りには誰もいないからいいけれど……
「私と第三王女の結婚は、今結ばれている友好関係をより強固にするためのもの。だが、陛下はその気があればの話と仰った」
「はい」
「だが、テレシアはもう気が付いているだろう? テレシアが捕らえたあの犯人が、あちらの護衛騎士だったという事を」
ただの憶測でしかなかった。けれど、やっぱりそういう事だったのかと納得してしまった。確かに、隣国と違ってこちらは日差しが強い。それに、首都に来るまで数週間もかかった。となれば、ずっとあのヘルメットをかぶっていればあの形で日焼けはする。
それに、あの洗礼された太刀筋もそう。あれは、長年腕を磨き上げ経験を積んだ者が得られるものだ。お父様のご友人は、隣国の騎士団所属だったらしいから、もしかしたらと思っていた。
となると……
「自作、自演……」
「王女が王城内で狙われ、怪我はなかったとしても犯人を捕まえられなかった。となれば隣国側が苦情を出すつもりだったのだろう。だが、結果的にそうならなかった。その誤算はテレシアが捕まえてしまった事」
あ……私、ですか。でも、確かにそうだ。王城に侵入を許してしまった事はこちらの落ち度。けれど、王女に怪我もなく、それでいて犯人もすぐに牢屋に入れることが出来た。
それに、陛下のあの言葉。こちらはもうそれが自作自演だという事に気が付いていると伝えられてしまえば、強く非難する事が出来ないだけでなく、そちら側が非難される事になってしまった。
「先日の動物誘導煙もそうだ。あの事件でもし被害者が出て、なおかつその問題が解決出来ず長引いてしまえば、周辺諸国にその事実が流れてしまう。そして、その状態での来訪となれば支障が出る可能性もある」
「この国は周辺諸国よりも軍事力を誇っているから、こんな事態を起こしてしまうとなると周りからの批判を受ける事になる」
「となれば、隣国側は都合がいい」
なるほど、そういう事か。だから、大前提であるならばという言葉が出てきたというわけか。