騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 けれど……どうして陛下のおそばにいるべき人がこんなところでベッドにいるのだろうか。いきなり抱きしめてきたけれど、それよりも時間を見てくださいよ。


「……あの、団長様」

「団長様? 昨日、ここで何と言った?」

「っ……」


 昨日……と言われ余計な記憶が鮮明に映し出され、顔がどんどん熱を持ち始めてしまった。団長様ではなく、リアムと呼べと、だいぶ言われてしまったけれど……だいぶ、うん、だいぶ……


「……リアム、その、時間が……」

「あともう少しある。テレシアとは、例え10秒しかなくても一緒にいたいんだ。だからまだここにいさせてくれ」


 それを言われ、数日前の事を思い出した。10分しかなかったけれど来てしまったこの方の事を。けれど、まさか10秒ですか。たったそれだけしかない時間でも……と言われると、何も言えなくなる。……嬉しいから。

 嬉しくて、顔が火照りそうだから。でも、嬉しいけれど、言ってしまったらもっとこの方が大変になってしまうから言えない。

 はぁ、近衛騎士団長がこんな事でいいのだろうか……

 昨日だってそう。昨日、ガストン先輩と一緒にいた時にリアムに笑顔で迎えに来られてしまったから、きっと先輩、いや、先輩達はだいぶ戸惑っているに違いない。……次出勤した時、絶対質問攻めになる。どうしよう……

 けれど……


「ん?」


 文句を言いたいところではあるけれど、結局言えなくなる事は分かっている。言わせてもらえない、ではなく私が言えない。

 それに昨日、誠意を見せると言ってあそこまでしてしまった。近衛騎士団長で侯爵家当主でもある方があそこまでしてしまうとは……と心配になったけれど、嬉しいのもある。


「テレシア」

「……はい?」

「――愛してる」


 その一言で、その微笑で、どうしようもなく嬉しくなってしまう。恥ずかしいから視線を逸らすけれど、それでもこの嬉しさは隠せない。それに、リアムは例え私が隠したところで全てお見通しだろう。


「本当なら、テレシアからの愛の言葉を聞きたいところではあるけれど……それは、仕事が終わってからのお楽しみにしようか」

「……えっ」

「今日、終わったら迎えに来るよ」


 そう言いつつ、キスをしてきた。待って、迎えにって、じゃあ行き先は……?

 けれど、私に質問させないつもりなのかキスがどんどん甘くなってくる。昨日の事まで思い出してしまい、混乱してしまいそうになる。

 結局、私はリアムに振り回されてばかりだ。

 けれど、彼はいつでも、私に向かって愛の言葉をいくつも囁く。

 騎士でもあり、令嬢である私に、幸せをくれる。

 そんな彼なら振り回されてもいいや、とちょっとだけ思ってしまっている事に気が付き内心驚いている。

 リアムという男性の色に、自分がどんどん染められてしまっているような気もするのは勘違いだろうか?


 END.
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