騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 途中で剣の鞘を拾いつつ、会場の真ん中を歩かされ……陛下方の方へ。周りは、ご令嬢やご夫人達は避難誘導で避難をしてもらっている様子が見える。きっと王城の方へご案内するのだろう。

 その時、気が付いた。何か、匂う。さっき森に煙が立っていたから火が出て焦げた匂いがこちらにまで流れてきたのかと思ったけれど、酸っぱいような、それでいて甘ったるいような匂いが混ざっている。これって、もしかして……あの匂い?

 そんな私の予測に、近衛騎士団長も気が付いたようだ。けれど、近衛騎士団を送ったから心配はいらないとのことで、それよりも陛下がお待ちだと急かされた。とはいえ、こんな血の付いたドレス……最悪すぎて穴に入りたい。団服を持ってきておけばよかった、と今更後悔しても遅い。

 ほら、と言われ陛下の前に。私、何か怒られるのでは……? 陛下となんて、入団式に少し近くでお顔を拝見させていただいたくらいだ。心臓がバクバクで落ち着けない。


「……王国騎士団第三騎士団所属、マーフィス男爵家一人娘のテレシア・マーフィスでございます。お見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳ございません……」


 言い切ったあたりで、あっと気が付いた。今私ドレスだ。騎士団服じゃない。なら胸に手を当てて頭を下げるんじゃなくて、両手でスカートをつままなきゃ。でも今剣持ってるからもう片方はつまめないし……


「なるほど、やはりそうか」


 えっ?

 そんな陛下のつぶやきに、一体どういうことなのかと混乱してしまった。やはりそうか、とは?


「面を上げよ」

「はっ……」


 陛下の表情は……何を浮かべているのかは分からない。けれど、怒っているようには、見えない。

 すると陛下は、先ほどの報告をするように言ってきた。

 あの動物は一角兎。足が速く、しかも高くジャンプするから意外と厄介な動物である。

 基本人を襲わない穏やかな動物のはずなのだが、私が見た限り興奮状態だった。外傷はなかったようだけれど、恐らく武器を向けられて逃げてきた、というところだろうか。それとも、私の予測が当たっていれば……

 ……けれど、今更ながらにケーキ用ナイフで仕留めた事はマズかったか。近くに武器がなかったとはいえ……後で怒られそうだ。

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