騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 まさか陛下自らお礼を言われるとは思わなかった。とはいえ、怪我人が出るところであったのは事実だ。


「して、両親は元気か」

「えっ……あっ、はい、病気もせず健康だと、聞いています……?」


 の、だけれど……何故、私の両親の話が……?

 あ、まぁ、私の父は近衛騎士団員だったし……退職しようとしてそれを断ったのが陛下だし。


「ふふ、マーフィス男爵にお嬢さんがいたことは知っていたけれど、こんなに勇ましくて素敵なお嬢さんだったなんて知らなかったわ。そうねぇ、目元は父親似かしら」

「剣の腕も似たようだな。まさかケーキ用ナイフで2匹仕留めるとは……無茶はあやつに似たのか」


 お父様に似ていたら、もっと器用に出来たはずなのだが。でもさすがに陛下方の前でこんな発言は出来ない。

 というか、何故私はお二人の前に立ってこんな話を聞かされているのだろうか。


「あやつが騎士団を辞めると言い出した時は本当に驚いた。剣しか頭に入っていないやつだと思っていたんだが、その一年後に娘が生まれたと聞き納得したものだ。だが、まさか娘を送り込んでくるとはな」

「……いえ、父は私が騎士団に入団する事にあまり前向きではありませんでした」


 その時の父の様子を思い出し、つい発言してしまった。

 お父様は小さい頃から剣を教えてくれた。けれど、全て護身用だ。騎士を務めるため、他人を守るためのものではなかった。お父様は最初から、私を騎士にさせるつもりは全くなかったのだと今なら十分に分かる。

 自分の身は自分で守れ。

 そう何度も何度も、小さい頃から聞かされてきた。お父様がその言葉に込めた思いは小さい頃の私には分からなかったけれど……今ならよく分かる。


「ほぉ、では父の反対がありつつも入団したという事か。自分の考えを全く曲げないあの頑固者がよく許したな」

「母が、本人の思うままにするべきだと父を説得してくださいました」

「なるほどな。それこそ家族愛、と言ったところか。あやつも立派な父になったな。あとで、たまには顔を出せと伝えておいてくれ」

「かしこまりました……」

「あわよくばお主を近衛騎士団に引き戻すと考えている、とも伝えておいてくれ」

「えっ」

「ははっ、冗談だ」


 陛下って、冗談言う人なんだ……知らなかった。すぐに手紙書いた方がいいんだろうけれど……本当にそれは、書かなくていいんだよね?

 確か、お父様は陛下の事を「酷いお方」と言っていた事が何度かあった。一体何が酷いのか分からなかったけれど……なるほど、そういう事か。

 というか、確かにお父様は頑固者ではあったけれど、陛下がそれを知っているというのはどういう事なのだろう。お父様、私聞いてませんけど。
< 40 / 124 >

この作品をシェア

pagetop