騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
「ご令嬢は口が達者だな。やはり、こんな女狐に騎士という名を与える事は間違っている。この国の恥と言っても過言ではない」
「……」
「それはお前が持っていいものではない。渡せ」
この方は私よりも長く騎士をやっている副団長だ。この圧倒的な重圧に一瞬尻込みしそうになる。
ここで渡してもいいのだが、団長様にはこれと一緒にドレスを台無しにした謝罪もしないといけない。
せっかくお忙しい中ドレスを用意してくださり、しかも私のところへ言いに来てくださった。更にはそのドレスが人気のブティックで購入したものなのだから、それを思えば申し訳なさで自分が押しつぶされそうだ。
そして一番は、この言いようが見過ごせない。例え身分も役職も上だったとしても、言っていい事と悪い事がある。
「私は王城騎士団所属の第三騎士団員です。そして、入団試験を合格し王城騎士団への入団を許可していただいたのは、他ならぬこの国の国王陛下です。その発言は、陛下への異議を申し立てる事になりますが、いかがでしょう」
「っ……」
「そして、この剣をお借りしたのはあなたではなく私です。でしたら、本人が直接お返しするのが筋ではないのですか」
「お前……っ」
今にも剣を抜きそうな勢いの怒りを感じる。けれど、ここはナイトパーティーの会場で、すぐ近くで貴族達が談話を楽しんでいる。そして、その中には彼の両親もいらっしゃる。であれば、大事にはしたくないだろう。
「早くこちらをお返ししたいのですが、団長は今陛下の護衛をなさっていますからね。もし異議を申し立てるのでしたら私と一緒に行きましょうか?」
「っ……」
「とはいえ、我々も任務中です。副団長殿もお忙しい身ですから、お仕事に戻られてはいかがですか?」
「っ……ちっ」
彼は、今にも人一人殺しそうな視線で私を睨みつけてくる。これはちょっと怖いな。
この方は本当に怖い人だなと思うけれど、でもやっぱり譲れないところはある。女狐だなんて初めて言われたけれど、あそこまで言われたら腹が立つに決まってる。
とりあえず早急にこの剣をお返ししたいところではあるけれど、今彼は陛下の護衛中だ。少し難しい。
けれど、そんな時だった。
「おいテレシアっ!!」
あぁ、お前もか……と、呆れてしまった。