騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
それにしても、狩猟大会後に王城の女子寮に戻った時は寮母に悪い事をしてしまった。血飛沫を浴びたドレスを着ていたから、必死になって「お医者様を呼ぶわねっ!!」と焦っていた。怪我はしていないと止めるのが大変だった。
そして、ドレスの処分も心苦しく寮母にお願いした。本当に、本当に申し訳ない……
「にしても、あの会場での騒ぎは見ものだったな。土下座だぜ? 土下座!」
「あの、見世物じゃないんですけど」
「でも土下座させられるテレシアはかっこよかったぜ?」
それはそれでおかしな話だが。あの会場内にいた騎士団員は第三騎士団が3人いたらしい。この中にいる先輩達は直接見ているか耳にしているらしく、皆さんご存じだったようだ。
はぁ、本当にやってくれるなあの親子は。周りの目があれば行けるとでも思ったか。見当違いだ。
「まっ、テレシアがあんな身勝手なもんに目を瞑って白紙に戻してやるほどのお人好しではないと知ってはいたけどさ。でも何事もなくてよかったよ」
「……ご心配おかけしました」
「でも俺聞いたぜ? 親父さん来るんだよな?」
「……」
それは、言わないでほしかったです。本当にどうしようと考えてはいるけれど、解決策が全く思いつかない。一体どうしたらいいのだろうか。お母様が一緒に来るか分からないけれど、もし来て下さったら助けてもらうしかない。
「お前の親父さん凄いんだろ? 一戦交えたいな~」
「もしそうなったとしたら、命はないと思っておいてください」
「……マジ?」
簡単に転がされますよ、ガストン先輩。
私が騎士団に入団すると言い出した後の父は、剣を持ち何度も鍛錬に付き合わされた。その時の父は本当に怖かったことを今でも覚えている。いや、一生忘れられないな。騎士団に入ったらそんな甘えは通用しないぞ!! と何度も言われた。
……本当に来るのかどうかを考えたいところだけれど、きっと来るんだろうなぁ。確か陛下がお会いしたいらしいけれど、冗談で近衛騎士団に引き戻すと言っていた。本当にそうなったら……恐ろしい。
「あ、そういえばテレシア、お前が着てたドレス、誰に貰ったんだよ」
「……」
危うく、飲んでいた水を吹き出すところだった。ドレスの話ではあったけれど、いきなりそれは出さないでほしい。
あのドレスは一体誰から貰ったか。さて、困ったぞ。
「ウチの母上がさ、それとな~く聞いてこいって煩くてさ。で、誰?」
「副団長、それもうそれとなくになってないっすよ」
「いいんだよ、どうせテレシアだし」
「あの、それどういう事ですか」
もうそれはド直球のような気がするけれど、副団長の性格からしてそうなるでしょうねと納得してしまった。
さて、困った。一体どんな言い訳をすれば納得してくれるだろうか。さすがに正直には言えない。
「どうせ女性だろ? 仲いいやつでもいるのか」
「……最近仲が良くなった、友人です。ドレスを買おうとして困ってた時、声をかけてくれて……サイズが一緒だったので、お古をもらったんです」
「へ~、意外だな」
その意外とはどういう意外なのか聞きたいところだ。私は友達がいなさそうだとでも言いたいのだろうか。確かに騎士なんてやってるからあまり女性の友達はいないけれど、女子寮で顔を合わせる子達とは仲は良いと思う。
酷いな、副団長。