騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
「狩猟大会で子息が使った動物誘導煙はその外国人商人から買った事が確認された。あれは国の許可がないと購入することが出来ない。早急に捕まえる必要がある」
なるほど、だから近衛騎士団なのか。
あの誘導煙は素材にいくつか問題があり、そして使用手順を間違えば被害が出るため勝手に購入することが出来ない。ただの子息があの狩猟大会で使用出来た事は国にとって許される事ではない。
本人はこっそり使おうと思って持ち込んだらしいが、使い方を誤りあんな事態になってしまったと聞いている。何故持ち込めたのかは、とある騎士団員を身分で脅して金貨を握らせたのだとか。王城騎士がなんてことしてるんだと言いたいところではある。
どうしてもこの狩猟大会で勝ちたい理由があったようだが、ルールはルール。何故これを使う事を禁止されているのか、ちゃんと理解してほしい。
「君は私達が会場潜入するための同行者として協力してくれるだけでいい。あとはこちらで処理する」
「了解しました」
この仮面パーティーでは、一人の男性が参加するのは珍しい。大半が女性で、男性は誰か女性とペアで来るのが普通だそうだ。
確かに、仮面をつけてのパーティーなんてものを考えるのは女性くらいだろう。趣向を変えた遊び、と言ったところだろうか。それに便乗する者もいるだろうし、普通のパーティーには飽きてる人達もいるはずだ。
なるほど、だから私なのか。そこいらの素人のご令嬢や夫人を協力者にするとなると、何かあった時に足手まといになる。自分の身を自分で守れるような人物でないといけない。
でも、パーティーと言われると気が重いな。またあの重いドレスと締め付けられるコルセットも付けないといけないけれど、任務なのだから仕方ない。
なんて考えていた時、座っていたはずの彼が私の横まで移動していたことに気が付いた。反対側の頬に手を添えてきて、耳元で囁いてきて。
「君のドレス姿、期待している」
「っ!?」
すぐに下がり、囁いてきた方の耳を抑えた。恥ずかしすぎて顔が火照ってしまい、彼から顔を逸らした。けれど、下がってもすぐに距離を詰めてくる。
「協力してもらうのだから、ドレスはこちらで用意しよう」
「え、あ、は、い……かしこ、まり、ました……」
私に見せてきた、少し微笑む、彼の顔。
ダメだ、顔の火照りが全然治らない。心臓だって動悸が激しくなってくる。煩くて仕方ないのに、中々収まってくれない。もしこれを近くにいる団長様に聞かれてしまったらと思うと……恥ずかしい。というより、もうすでに顔が火照ってしまっているから遅いかもしれないけれど……